“プロサーファー大橋海人”コスタリカで気づいたローカリズム【QUIIVER独占インタビュー】

Interviewer & Writer Tatsuya 
Interviewe to 大橋海人プロ(インタビュー中は大橋で表記します。)

夏が近づき、サーフィンの季節が近づいている。
湘南などアクセスが良く、サーフィンを始めてみようという人も訪れやすいポイントでは、地元サーファーや、遠方から波を求めて訪れた人、初めて波に乗る初心者など様々な人が共存する。
そんな海で大切となってくるのは「ローカルサーファー」の存在だ。
毎日のように海に入り、サーフィンを楽しみやすいような環境作りに取り組み、自然環境の保全も行うローカルサーファーはサーフポイントを守る意味で重要な役割を果たしている。 

日本を代表するトップサーファーであり、フリーサーファーとして海外からも高い評価を得る大橋海人プロが約1年ぶりに、大会参加や作品撮りのために出かけたコスタリカへのサーフトリップの中で感じた「ローカリズムの大切さ」について話を聞いた。

Q.コスタリカを訪れたのは初めてですか?

大橋:コスタリカを訪れたのは2回目でした。5年前くらいですかね。ハコ(コスタリカ中央部のプンタレナス郡の小さな村)で行われた大会に参加しました。ビーチブレイクでその時はあまり波が良くなかったです。

Q.久しぶりに訪れた印象は?

大橋:ちょうどスウェルが来ていて元々の予定を変更して、空港から8時間かけてパボネス(コスタリカ南東部でパナマとの国境近く)というポイントに行ったんですが、とにかくグーフィーがすごくて感動しました。100メートルくらい乗れるんじゃないかという波が来ていました。

Q.海に入ってみて感じたことは?

大橋:実は小学3年生の頃かな。父(大橋勤さん・元プロサーファー)に「コスタリカにはすごいグーフィーがあるぞ」と聞いたことがあるんです。昔、父が行った時にはちゃんとした道も無くてガタガタと車を走らせ、近くにいるワニに睨まれながら川を渡るとその先に夢のような波があったと話していました。今回、パボネスのグーフィーを見てやっと来られたなという感じでした。

Q.コスタリカのサーフポイントはどうでしたか?

大橋: ローカルの人がハッピーでした。すごく、ウェルカムだし日本人なんてなかなか来ないからとても歓迎されました。

Q.大橋さんにとってのハッピーとはなんでしょうか?

大橋:僕にとってのハッピーは、気心の知れた仲間と誰もいない海でサーフィンすることですね。どうしても人が多いと気を遣ってしまうので。トリップの時は波が良くてもひとりだとつまらないし、波が良くなくても好きな仲間がいればハッピーなんです(笑)

Q.コスタリカでは外から来たサーファーを嫌がるような雰囲気はないんでしょうか?

大橋:日本と違ってあの人たちはローカルだなと明らかに分かる人たちが居ました。いい波にはみんなしっかりと乗っていました。僕たちが何本か乗っていると向こうから「おー、お前らサーフィンうまいな!どこから来たんだ?」みたいな感じで話しかけてくれました。最初は、気をつかって端の方でやっていましたが「おーい、こっちのピークこいよ!」って声をかけてくれました。日本のローカルの人たちにはあんまりその感じはないですが、海外ではよくあるんですよね。

Q.日本のローカルとの違いは?

大橋:もちろん、みんなではなく一部の人ですが、外の人が海に入っただけで怒る人もいる。あと、外からの人が積極的に行かない限りあんまりコミュニケーションも少ないイメージですね。でも、僕は海外のやり方をまねしたら良いんじゃないかなと思います。海に入っただけで怒られちゃうのは悲しい。もちろん、ルールを守ってローカルの人達をリスペクトするのは大事。僕は父が厳しい人だったのでその辺はしっかりと教えてもらってきました。例えば、見かけない子どもを見たら「おはよう。どこから来たのー?いい波乗れよ」ってローカルの人が声をかけてみるとか。そうしたらその子どもはローカルの人を良い人と感じるだろうし、絶対にその人のサーフィンの邪魔をしようとはしない。そんな関係性が良いですよね。

Q.日本は海外のような良い波が来ることが少ないですね

大橋:日本の海は波も限られていて、どこに行っても人が多いです。僕たちはプロなので波を捕まえてどんどん乗れちゃう。もちろんルールは守りますが仕事なのでしょうがないと割り切っています。でもローカルの人にはもしかしたら嫌な思いをさせてしまっているのかなと感じることもあります。だからこそ、コスタリカに居た存在感のあるローカルっていう存在は大切なのかなと感じました。

Q.新型コロナウイルスの影響でサーフィンを始めた人も多いように感じます

大橋:湘南も移り住んで来る人が増えて、海に入っている人も増えている。僕はそれについては良いことだと思っています。でも、ハプニングや問題も起きてしまっている。そんなタイミングだからこそローカルという存在について考えるきっかけなんじゃないかなと思っています。自分にも僕がローカルと呼ばれるようなポイントもあるし、変わっていかなければいけないなと今回のコスタリカの旅を通して感じました。コスタリカには存在感の強いローカルがいた。日本人は優しいところがあるからルールを守れない人が居ても見て見ぬふりをしたりすることもある。でも、それがもっと大きなトラブルにつながることもあるんですよ。お互いが歩み寄ってコミュニケーションを取り合ったらハプニングやトラブルは減ってみんなハッピーにサーフィンが出来ると思うんですよね。

Q.久しぶりの海外で感じたことは?

大橋:いやー、1年以上海外に行けていなかったので今回、コスタリカに行って「やっぱりこれだよな」と感じました。雰囲気がピリピリしていないし、自由でみんなが助け合って生きています。久しぶりに海外に出てみて気持ちよいな。と改めて感じました。

大橋プロがコスタリカで感じた「ローカリズムの大切さ」。
自由なサーフィンを守るためにサーファーが求められるルールや厳しさを大橋プロから話を聞いて認識させられた。
目の前で良い波が割れてテンションが上がること。
初めて板を抱えて海に入る初心者のドキドキ・ワクワク感。
波がある時も小さい時も、毎日のように同じ海に入ることが生活の一部となり安らぎを感じること・・・。

全ての人がそれぞれの感性で波乗りを楽しむ環境作りをみんなで考えていきたい。

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