もうよそ見できない!私たちが今できる海の為の第一歩って?上智大学大学院地球環境学研究科 准教授 井上直己教授

SDGsとは一体…?

まず本日のインタビューに入る前に、皆様SDGsとは聞いた事ありますでしょうか?
SDGsについて少々ご説明致します。

SDGs

持続可能な開発目標(じぞくかのうなかいはつもくひょう、英語: Sustainable Development Goals: SDGs〈エスディージーズ〉)とは国連持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる[1]。SDGsとは、これらの英語の頭文字と最後のスペルをとったものである。また、その中にも232の指標がある[2]
2015年9月の国連総会で採択された[1]我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development) と題する成果文書で示された2030年に向けた具体的行動指針で、2015年までの達成を目指していたミレニアム開発目標 (MDGs: Millennium Development Goals) が継承されている。

wikipedia参照

QUIIVERはサーフメディアになりますが、これまでも海やサーフィンに付随したライフスタイルの提案をして参りました。

昨年度の夏にQUIIVERをリリースしてから私が執筆するコラムやnews以外にも素敵なプロサーファー様達に登場して頂き、プロサーファー様ならではの目線で、ライフスタイルやそして仕事の取り組み方、海についてと沢山のエピソードを発信させて頂いております。

このQUIIVER内では偶に触れておりましたが、以前私はVeganのお店をやっておりその世界にいると必ず繋がることがあります。(私自身はフレキシタリアンです)

サーフィンは、海という場所をフィールドに置いています。
サーファーにとって海はとても密接な関係ではありますが、サーフィンをしない私達人間にとっても、海の恩恵を受けてこの命が成り立っております。

これらの関わり合いを考えると、この海の豊かさを守ろうというこの活動は他人事ではありません。

この地球環境という非常に大きなテーマに対し今世界でも問題視されているSDGs17のグローバル目標の一つでもある14番目の海の豊かさを守ろう。
という項目があります。

こちらの課題は特に海をフィールドにもつ私たちにとっても、最も重要で軽視はできない課題だと考えます。

しかし、私達が今どの様な課題を持っているのか日本国外ではどの様なことがあるのかは興味がないと知る機会もないと思うのです。

そんな機会をこのQUIIVERで作れればと思いましたので、地球環境問題で数々の講義を行って専門家であられる上智大学大学院地球環境学研究科の井上直己准教授にzoomインタビューにてお話をうかがわせて頂きました。

photo by INO

上智大学大学院地球環境学研究科准教授井上直己教授

2001年、東京大学法学部卒業。以来、環境省にて気候変動対策、生物多様性保全などの企画立案に携わり、2018年より現職。食を含む消費活動がもたらす地球環境問題などについて研究。化学肥料も農薬も使用しないコミュニティ支援型農業(CSA)の「なないろ畑」(神奈川県大和市)に参画する他、大和市環境審議会委員として地元行政にも参画し、変動の時代に備えたローカルアクションの在り方を模索。英国ケンブリッジ大学修士(環境政策)、サセックス大学修士(環境開発)。

参考URL:https://greenz.jp/2021/01/13/draw_down/?fbclid=IwAR2TzCd9LSC3qYC5HW_g-cd4mBvLEMR3CUhOVD83W4I8-GODzBYcd5aATvI

猪野:
直己さんと猪野が知り合ったのは、猪野が以前経営&運営していた広尾Vegan cafeに直己さんが遊びに来てくださったのが始まりでしたね。
この度は、非常にお忙しい中で取材を受けてくださり心から感謝致します。
出会ったばかりの頃は直己さんがお肉を控える食事スタイルを取り入れはじめ、確か半年とかだったと思うのですが、各地での地球環境と食についての講義を行いながらも、生産である畑まで極めるという、すごい行動力にいつも感動を覚えます。
そして何よりもご自身も活動を発信しておられますが、発信を見ると直己さん自身が楽しんでらっしゃるのが伝わります。それも大事なことですよね。
最近はラジオに、各地での公演にと沢山の皆様に実践しているライフスタイルを混ぜ合わせ地球環境についての講義をされておりますね!
出逢いから2年が経ちましたが直己さんは以前とどの様にライフスタイルが変わりましたか?  

井上さん:
猪野さんお久しぶりです^^
二年も前でしたか、懐かしいですね。
今現在、私自身はペスカタリアンでもありフレキシタリアンに該当するかと思います。
つまり、牛、豚、鶏はいただかず、魚介類は少量をいただく、もしヴィーガンのメニューがあればそれを選ぶスタイルです。

活動はと言いますと小学校、中学、高校で講演し、食と地球環境の関係についてお話をしたり。
PTAもやっているんですが、先日はオンラインの親子クイズ企画をして、身近な温暖化影響と自分たちができることを伝えたり、市や地元自治会とのコラボで気候変動と食の関係について市民講座を開いたりしています。
後ほど触れますが、市民参加型の有機農場「なないろ畑」での活動もしております。

猪野:
ありがとうございます。
活動は直己さんのfacebookのタイムライン上でいつも拝見しております。
その中では、講義に紐付いた活動をご自身のプライベートでも取り入れておられていてそちらについても質問で触れていきたいと思います。
直己さんは今現在、上智大学大学院地球環境学研究科准教授としてお勤めされておられますが、その前は環境省にいらっしゃったんですよね。

その時は、気候変動対策、生物多様性保全に関わられていたとの事ですがその時と今とではどの様に変化したと思いますか?

講義を行う様になった経緯

井上さん:
ありがございます。
私は2018年に上智大学に来ました。
学生達と率直なディスカッションなどを重ねるうちに食がもたらす環境影響について問題意識が強くなり、2019年に入ってから市民講座などを積極的に実施するようになりました。

環境省で働いている時は、政策づくりに携わっておりました。
情報を集め、解読し、関係者と意見交換や調整をし、あるべき方向性を考え、政策を作り、実行していくといった内容でした。
基本的にはデスクワークであり、今のように環境行政の関係者以外の方と環境の話をするという機会は中々ありませんでした。

大学に移るまでは、食事の選択が気候変動に与える影響については耳にしこそすれ、自分ごととしてそこまで意識することはありませんでした。日本政府の中でも気候変動の文脈で食の選択の問題が語られるのは非常に少なかったんです。

一方、世界の科学者や国連は食料サプライチェーン(供給網)が気候変動に与える悪影響を深刻なものとしてとらえ、持続可能性のために、肉類や乳製品等の消費を減らし、植物性中心の食事に転換することを提唱しています。そうした問題意識が強い留学生らと議論するうちに、私自身が多くを学び、意識を高めるようになりました。

日本ではそうした問題が広く認識されず、食事の選択について議論がされていないこと、そして政府の中でさえもこのような問題が語られることが非常に少ないということに問題意識を持ちました。
食事の選択については反発も予想される敏感な問題であるので、伝え方は難しいです。

そしてそもそもあるべき食事とは何なのかも答えの無い難しい問題です。そしてそもそも自分が何も行動していなければ、何も語れないと思い、まずは自分が実践してみて、それによって気付きを得ようと思い、牛肉や豚肉、鶏肉をいただかず、穀物と野菜、豆類をしっかりとるという食生活を始めました。

最初は実験のつもりでしたが、実践してみて、気づくことが多く、これが答えに近いという確信を得て、2年間続いています。また講演会などで人に積極的に伝える活動を通じて、伝え方も学びました。そして丁寧に伝えれば、問題意識は共有できるという良い感触も得ることができました。

私がそのようにして人に伝える活動をするに当たって、大きな影響を受けた人物がいます。アル・ゴア元米国副大統領です。

アル・ゴア元米国副大統領

地球温暖化の深刻さと対策をとれば間に合うという希望を各地の講演で伝えて、行動変容を促す活動をする。

2003年に上映されたドキュメンタリー映画 ”不都合な真実”、2017年の”不都合な真実2”にそれぞれ主演。2007年、ノーベル平和賞受賞。

参考URL:https://www.vogue.co.jp/change/article/innovative-senior-al-gore

彼の語り口調はユーモアを交えた穏やかさと、データで裏付けられた現状と厳しい予測を伝える迫力とが織り交ざり、心に訴えるものがあります。
私自身、彼の話を聞くとやる気が出てくるのです。
多くの人が彼の真剣な声に耳を傾け、持続可能性に向けた行動変容をとろうと思うようになる。
そのように人の心を動かす彼の力は一体どこから来るのだろうか。

彼の何が、私自身に力を与えてくれるのだろうか。こうした疑問と共に、私に一つの気持ちが芽生えました。

アルゴアになりたい。

突拍子もない話ですが(笑)。

私はアルゴアが持つような、持続可能な社会のために、より良い社会を作るために、人の心を動かすような力を持ちたいと本気で思うようになったのです。

そのためには彼のように勉強をして、伝える経験を重ね、工夫し、多くの人と対話をしながら、伝え方の改善をしていくということが必要です。
また口を動かすだけでなく、行動変容の実践をすることで、多くの気付も得られ、伝える内容も豊かになります。そしてそのような実践の過程で豊かな人間関係を築くことにもつながり、そのようにしてできた知人や仲間が更に私に力を与えてくれます。私は「アルゴアになる」ために訓練を重ねた結果、多くの力を得ることができました。

海のプラスティック問題とは?

猪野:
地球環境の一つに考えられるのが海の環境問題です。
以前、直己さんに教えて頂いた海が好きなダイバーやサーファー達が、同じように環境問題に心を痛めて、ドキュメンタリーを作っているとリンク集を送って下さいました。
そこには思わず目をつぶりたくなる現実が映し出されており、平和な日本にいるとこの様な光景は中々観れないので、非常に私自身の心に突き刺さりました。
QUIIVERでも、各プロサーファー達がビーチクリーンなどを初め海をきれいにしようという活動の発信をしています。
例えば、プラスチック問題が日本でもようやく取り上げられ始めたかと思うのですが、QUIIVER読者にも何故ここまでプラスチックが危機とされるのかを今一度教えていただけますでしょうか?

井上さん:
まず、海に流入するプラスチックごみの量が爆発的に増えています。
2050年には海の魚の量よりも、海中のプラスチックごみの量が超えてしまうと言われています。
これに関連して付言しなければならないことは、海の魚が減っていると言うことです。だからプラスチックが海の魚の量を超えてしまうのはもっと早いかも知れない。

(例)さんまが減っているのは一つの例。参考URL:https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/279303.html

2048年には食用の魚がいなくなるという学術論文が雑誌サイエンスに掲載されました。

2006年にアメリカの科学雑誌「Science」にてDalhousie UniversityのBoris Worm教授率いる研究チームが発表した学説

魚が減っている原因は、地球温暖化による海水温の上昇、大気中の二酸化炭素濃度が上昇することによる海水の酸性化、海洋汚染など様々なものが考えられます。そしてプラスチック汚染の影響も懸念されています。

一つ一つの例を見るととてもショッキングでして。

↓こちらのリンクに動物達の事例が掲載されています↓

※ショッキングな箇所がありますので観覧にはご注意下さい。

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44249670

例えば死んだ海鳥のお腹の中からペットボトルのキャップが沢山出てくる映像でしたり。

※ショッキングな箇所がありますので観覧にはご注意下さい。


海中に浮遊するプラスチックは時と共に砕けて微細なプラスチック片(マイクロプラスチック)になりますが、それ自体は数百年や数千年分解されないと言われます。それをプランクトンが食べ、それを小魚が食べ、大きな魚が食べ、人間が食べています。

人間は既に飲食などを通じてプラスチックを体内に取り込んでいると言われ、その量は、1週間に5g、つまりクレジットカード1枚分になると言われています。

マイクロプラスチックは有毒物質を吸着する性質があり、これらが人体に与える影響が懸念されています。


クジラやウミガメなどの海洋生物や海鳥などは、餌と間違えてプラスチックを食べてしまっており、その結果、多くの生物が胃袋にたくさんのプラスチック片を飲み込んで、パンクして死んで行っています。

プラスチック汚染への対策として生分解性プラスチックやバイオマス配合のプラスチックと言うものに期待が集まりますが、バイオマスだから生分解性だとは限らないですし、生分解性だからといって必ずしも海水中で分解するとは限らないのです。生分解性とは多くの場合はコンポストの環境中で分解するという条件があるからです。またたとえ海洋生分解性であっても即座に分解されるわけではないため、注意が必要です。

猪野:
人が便利だと思って作り出したものは地球にかえらないんだなと感じてしまいます。
写真や映像は非常にショッキングですが、私たちは現実にこれらのことが起きていることを知らなくてはなりません。
動物達にこんな思いをさせてしまったのはプラスチックを生み出した私達ですものね。。。
プラスチックも歴史上では世紀の大発明だったと思うんですが、どうしても原価が安いが故にここに甘えてしまう。
なんと言いますか、人が招いた悲劇だと感じます。

井上さん:
原価が安いのは環境汚染により発生する社会的コストが含まれていないからです。私たちが支払わない代わりに、自然環境や生物たちが代償を支払っています。
そしてそのつけは、自然環境によって活かされている人間が払わされることになります。

今私達が海のために、できることとは?

猪野:
今私達一人一人ができることっていうのは何があるんでしょうか?
ビーチクリーンでしたり、プラスチックで作られている買い物袋やカップなどを使う機会を減らすなどそう言ったことなんでしょうか?

井上さん:
一人一人の活動の中で、ビーチクリーンのような活動はとても大事で、活動を続けられている皆さんを心から尊敬しています。
私も日々見かけたゴミはなるべく拾うようにしています。私の友人がそうしているのを見ると励まされますし、私の行動が他の人に良い刺激となればよいなとも思います。
しかし残念なことに、一人一人が地道に拾ったとしてもまだまだ足りない程、大量のごみが海洋に流入しているという現実があります。

猪野:
プラスチックの代替えとして紙の導入をしている企業やお店も増えましたが、そこはどうなんでしょうか?

井上さん:
そうですね。紙ならば再生可能だということで、罪悪感がなくなるという感覚が浸透している気がします。
しかしプラスチックを紙に置き換えればいいのかというと、そこは疑問です。
資源である木材は切ったら、また生えてくるには何十年という時間がかかります。
その再生速度よりも速い速度で消費していたら森はなくなってしまいます。リサイクルすればよいと思われるかもしれませんが、リサイクルにはエネルギーがかかり、また食品容器など汚れがひどくなればリサイクルが難しくもなり、完ぺきな解決策とは言えません。
やはり使用量を減らすこと、特に、一瞬使うだけで捨てられるという「使い捨て」自体を減らす必要があると考えます。

紙コップなど「使い捨て」を前提とした製品は、きっと30年後には非常識なものだとして捉えられるような時代になると考えます。

では、どのようなアクションが必要となるのでしょうか。一人一人が環境負荷を減らすことはとても大切です。小さな取り組みの積み重ねが大切だというのは間違いありません。ですが同時に、今の地球全体の環境負荷は余りにも大きく、一人一人の取り組みの総和だけではとても足りないというのも事実です。

最も大切なことは、社会システムを変えることなんです。

お金の流れ、経済的な価値、規制、開示される情報、そういった社会経済のシステム全体を環境負荷を下げる方向に大きく変えていくことが不可欠です。
しかしそのような変化は一部の政策立案者に任せれば起きるのかと言うとそんなことはありません。なぜなら今の社会システムは様々な主体がこれまで通りの経済活動を通じて維持されているからです。消費者もその中の大事な主体であり、消費者が変化を望まなければ変化は起きません。

このシステムを支えている私たち消費者自信が変わらないといけないんです。

一人一人の環境配慮行動は大切ですが、それを社会システムを変えることにつなげること、それこそが大事なのです。

具体的な事を言えば

・投票
・発言
・選択

これらの三つです。これはアルゴアが強調していることです。

自分一人だけで環境にやさしいことをコツコツやることも大事ですが、それだけではなく、人に話してみること、楽しさを共有すること、誘ってみること、お願いしてみること、そういった行動はもっともっと大事です。

たとえば、

・スーパーなどの意見箱でポストして、応援メッセージとともに要望を伝える
・アクションをSNSなどで発信し、自分が感じたことを周りにも知ってもらう。
・選挙の際には候補者に気候変動問題などの考え方を訊いてみる。そして有権者としてそれを重視していることを伝える。
・買い物の際には本当に必要なものを選択する。そして環境負荷がなるべく少ないものを選択する。そしてそのような選択の良さを周りに伝えてみる。

最初は家族や友達など、親しい人に話してみる、次にもう少し幅広く話してみる、同じ思いを持った仲間を見つけて、仲間を広げていく、さらには地元の学校や自治会などに話してみる、そして役場にも話をしてみる、と言う風に、徐々に輪を広げていくことが大事だと思います

自粛が続く今だから出来る小さな一歩

猪野:
そういった点で言いますと緊急事態宣言がこの一年では二度発令されて外出自粛国民がしている中、”STAY HOME”でいつもよりも自分に向き合う時間が増えたことで、辛い思いをしている人もいます。
しかし、こう言ったビジョンを持ってSNSのポストを意識してみたり呼びかけてみたり、触れ合ってみたり、今こう言った状況だからこそできる新しいネットワークやコミュニティ作りっていったものは確かにありますし、今だから出来るアクションですね。
正しくタイムリーで、小さな行動が色んな現実を変えていく時にいるのではないでしょうか?。
この自粛中、具体的な個人でできるおすすめのアクションってありますでしょうか?

井上さん:
そうですね。
アクションを通じて、支え合い励まし合うコミュニティの形成につながっていくのはとても大事なアプローチだと思います。。

個人といった点でのアクションを言いますと、まずは先程触れましたコンポストについて。私はマンションのベランダでコンポストを使っております。

簡単に言いますと生ゴミを微生物の力で分解して植物の栄養を豊富に含む土(堆肥)に変えていく容器です。私がお勧めしたいのは回転式のものです。

画像引用:https://lfc-compost.jp/about

枯れ葉や米ぬかなどを豊富に入れた容器に生ごみを入れて、定期的に回転することによって、酸素を必要とする菌と酸素はいらないよっていう菌が交互に活性化するので、どんどん分解が進むんですね。なので、生ごみの臭いは全くしません。代わりに土の香りがします。

菌による分解が進むと熱を発するので、真冬でも容器の中は温かいんです。菌が一生懸命分解しているのがよく感じられます。これはもはや「処理」ではなく、無数の菌を育てている感覚です。


例えば同じことは畑の中でも言えるんです。
私は、地域コミュニティーが参加して農薬にも化学肥料にも頼らない健康な野菜を自ら作る ”なないろ畑”(神奈川県大和市、座間市)に参画しているのですが、

参考URL:  https://nanairobatake.com/

その創始者である片柳義春さんは、豊かな畑とはつまり多様な菌が元気に息づいている土があることなのだとして、自分は畑で無数の菌を飼っているような感覚を持っているとおっしゃっていました。

また同じことは私達のお腹の中にも言えるんですね。

腸には多種多様な菌がいてそれらが人が食べた食物を食べてくれて、それで出来た栄養素でもって私達の健康を保っている。
土の菌、野菜の菌が豊かにあるおかげで、お腹の中の菌も元気になる。

そうしたバランスを壊しているのが農薬であり、殺虫剤であり、行き過ぎた殺菌でもある。

生ごみコンポストや農作業の体験をしていくと、見えない世界に思いをはせ、自然と人間とのつながりという大事な点にも気付けると思うんです。そう、大切なことは目に見えないんです。

猪野:
ぐさ!っときますね…。全ては繋がっていますね。。。
私達は生産といったところから離れすぎてしまったが故に大事なことを忘れてしまったのかもしれません。
この生産といったところが結局地球環境に負荷をかけているとのことなのですがここについても教えていただけますか?

地球環境と食との関係について

井上さん:
今の世界の食糧供給システムは地球環境に大きな負荷を与えていて,

生物多様性の損失に招いたり、気候変動を進める原因になっていると言われているんです。世界の食料供給システムは温室効果ガス総排出量の1/4を占めているんです。

その中で畜産は最大の排出源です。具体的には、飼料に用いる穀物を大量生産するために世界の農地の拡大が止まらず、そのためにアマゾンの熱帯雨林などが破壊されています。また穀物の大量栽培のために農薬、化学肥料などを大量に使用し、また糞尿も大量に排出されることから、環境汚染を引き起こしています。

メキシコ湾に酸欠状態の「死の海域」が出現するなど、汚染の規模は大きく、気候変動にもつながります。世界に14億頭いる家畜牛はげっぷを出すことで強力な温室効果を持つメタンを放出します。大量の糞尿からも強力な温室効果ガスが放出されます。そうした工業型畜産の悪影響を推し進めているのは、世界的に増加がとまらない肉食需要です。

日本では食事が欧米化し、肉類の消費が60年で10倍に増えました。これと同様に、途上国でも経済的に豊かになるにつれて肉類への需要が益々増加することが見込まれています。これを満たすために工業型畜産が更に拡大していくと、気候変動が止まらず、その影響で食料システムも脅かされると科学者は警告します。持続可能性のためには、日本を含む富裕国の肉類への需要を減らさなければならないとしています。

プラントベースの選択がもたらす優しい未来

こうした背景から、野菜や穀物、いわゆる植物性を中心とした食事(プラントベース)というものが提唱されているのです。
ベジタリアン(菜食)やヴィーガン(完全菜食)はその一部ですが、少量の肉類や乳製品が入ることも許容している考え方のようです。

こうしたプラントベースの食事を消費者が選択をすることで、社会に大きな変化をもたらす可能性を持っています。

この選択には、健康な体が作られるという大きなメリットがあります。
現在市場に出回っている食品は、肉の脂のほか、砂糖、塩、添加物にまみれていて、健康を害するものが多いです。そして野菜の摂取量も少なく、結果、生活習慣病が増えています。

私も2019年より前はそういう食事を好んで食べていたんですけれども、食が環境に与える影響を知り、まずは肉類をたってみることをきっかけに、健康食に大きくシフトすることになりました。

肉に頼っていた蛋白質を補うために、豆類の他、多様な野菜を十分に採るようにし、玄米や醗酵食品などを好んで採り、栄養バランスに心がけました。蛋白質は肉類である必要はなく、植物性のもので十分採れるのだということを体感しました。国連も強調するように、地球の健康に良い食事は、個人の健康にも良いのです。これは医療費の増大が財政を圧迫する日本においても、大きなメリットとなるのではないでしょうか。

工業型畜産の問題点は、地域循環を断ってしまったという点です。かつて日本では畑作と組み合わさる形で小規模な畜産があちこちに存在していました。刈り取った後の稲わらを飼料に与え、糞尿は肥料とするという地域循環があったため、環境負荷は小さかったのです。その地域循環を取り戻すことが何より大切。そのために消費者は地産地消を進める必要があります。日本は穀物飼料の輸入量が世界第2位であり、国産の肉類であっても大部分は海外の穀物に頼っています。このため、肉をいきなりゼロにはできないとしても、国産飼料を使った産品を選ぶことで環境負荷は下がります。また、牛肉から、穀物飼料の消費が少ない鶏肉に変えるだけでも、環境影響はずっと小さくなります。

やはり根本的な問題は、過度なグローバリゼーションによって、地域の生産者が減り、生産と消費が地理的にも心理的にも余りにもかけ離れてしまったことにあります。
そのため、生産による悪影響を全く知ることなく消費するということが加速してきました。

この生産と消費を如何に近づけるかが重要です。そうすれば消費者は生産による影響も理解しやすくなり、生産者と対話することで社会的により望ましい生産形態になるかも知れない。
そして地域の資源循環や経済的な循環も起きるかも知れない。更に距離を近づけて、消費者が生産者と共に生産をすることにもなれば、日本で失われて久しい地域コミュニティが作られることも期待されます。それは高齢化社会や災害などの様々な課題への対応においても有効です。
本年5月のダボス会議のテーマは「グレート・リセット」、つまり今の資本主義の経済社会システムを大きく見直していくことが提唱されています。そうしなければ経済や社会は持続しないという危機感が背景にあります。日本でもこの50年で失われてしまった多くのものを取り戻す、「グレート・リセット」が求められているのです。

猪野:
ベジタリアン、ヴィーガンと聞くと宗教的な食事の節制でしたり、動物愛護などのイメージがついていると思います。


確かにこれらの活動をしてる方もいられますし、そういったライフスタイルもあります。
一見関係ない様に見える地球環境と食の繋がり。
直己さんのお話を聞いているとにプラントベースの選択を1週間に1日するだけでも少しだけ世界は変わることになるだろうと予想されます。

地球という大きい括りで考えると、どうせ私一人がやってもと思いがちですが

一人の声が連鎖すると、良くも悪くもとんでもないパワーを産むこともこのインターネット社会によって証明されつつあるのではないでしょうか?
どうせなら良いことに使いたいものです。

全ては繋がっているということですね。

本日は私たちが抱えている最も大きな課題の一つである、地球環境のことについて井上直己教授にお話を伺いました。

QUIIVERでは今後も専門家の方を招いて、このような問題発信もしていきたいと思います。

直己さん、本日は本当にありがとうございました。



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