本選ディレクター 松野陽斗から見た”KNOT online contest”の舞台裏

cover photo by Kenyu/KNOT

感動的なラストで締めくくった”KNOT online contest”。
まるでここまでのシナリオが出来ていたかのような、そんな本戦のバックグラウンドを追った。
今回のコラムは本選ディレクターを勤めさせていただいた、プロサーファー松野陽斗がこの本選をレポートとしてお送りしたい。

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introduction

天気アプリで来週の太平洋の動向を見る。小さく見える赤い渦がKNOT online contest本戦の狼煙をあげた。 –

Instagramによる本選メンバーの選考が終わり、後は本選運営の準備と台風のスウェルを待つのみとなった。

例年なら秋の入口に当たる9月頃から本格的な台風シーズンを迎える日本ではあるが、今年は9月に入ってもその気配はなかった。

今回の本選は開催予定日を設けるのではなく、それに相応しい波を待つ形で行われるため、極めて自然任せであり一種の賭けのようなものであった。

当初は、本選勝者決定後コロナウィルスの状況次第で、年内に世界のフリーサーファーを招いた海外トリップを計画していたこともあり、なるべく早い開催としたかった事務局本部サイド。

そういった理由から本選は、必然的に次の台風スウェルに焦点を合わせていた。

9月中旬から26日までは開催できない期間があり、次の台風スウェルに狙いをつけるとすれば27日からのウェイティング期間となる。

月初めから海の動きを見ていたが、なかなかうねりの種となる低気圧が良い位置に発生しない。

9月21日(水)

その頃毎日のルーティーンとなっていたWindyを開いて先の予報までスクロールしてみると、日本の下の方少し東側に小さい渦ができていた。

少し外側すぎる気もしたが、勢力によって表示の色が変わる天気図が先に先にスクロールしていくとみるみるうちに太平洋が赤い渦で覆われて日本に寄ってくる。

すぐに海人君に画像を送った。

電話が来る。

「来たね!これで決めよう」

翌日、該当選手に一斉に連絡が入る。事務局本部サイドも選手の宿を取ったり、コロナウィルス対策、転々と変わる台風の動向に合わせたスケジュール管理と一気に慌ただしくなった。

その後ミンドゥルと呼ばれる台風16号が、海外トリップへ行ける最後の一人を決める“KNOT online contest”本選の開始を告げる狼煙をあげた。

ウェイティング期間に突入。台風接近とともに増す緊張感

9月27日(月)

台風が接近してくると同時に、北は宮城県南は沖縄県と日本全国から茅ヶ崎に本選に選ばれた選手8名が集まってくる。

Photo by KENYU / KNOT

                  

Photo by KENYU / KNOT

                  

Photo by KENYU / KNOT

                  

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Photo by KENYU / KNOT

               

Photo by KENYU / KNOT

会う選手はみんな以前から気の知れた仲間が多く、リラックスしているように見えたが、みんなどこか緊張と闘志を覆い隠しているような印象を受けた。

それもそのはず、今回優勝すれば日本人で誰も見たことのない景色を見ることができる。

その隠されていた闘志は本戦の選手の演技を見れば皆が納得するだろう。

肝心の波の方はと言うと、サイズは上がってきたが勢力が大きい割になかなか期待値に達するほどのうねりが届かない。

湘南地域で、グッドコンディションを当てるのがなかなか難しいのは自分も海人君も分かっていた。
しかし、ある程度の波であれば集まった選手たちなら誰でもメイクすることはできる。

本当のスキルを発揮して欲しいという思いもあって海人君は前からしっかりとしたポテンシャルのあるうねりが入らないと開催はしないということは事務局本部にも伝えていた。

この日から毎朝明るくなる前に起き、地形の目星を付けた各ポイントへ行って状況をチェックする。

それを大会が開催される前日まで繰り返すのだが、少しいつもの台風とは違う傾向があった。

普通、台風が近付いて来るとそれに比例して日に日にサイズも上がってくるのだが、今回は朝一だけサイズが上がり昼前には潮も満ち徐々にサイズダウンするという、なかなかジャッジメントが難しい日が続いた。

9月29日(水)

Photo by KENYU / KNOT

ウェイティングをかけてから3日間がたった。しかし、海人君の望む波は来ない。

台風最接近の予想が10/1。それ以降のコンディションは期待できなかったため、残す希望は30日のみとなった。

今回の台風は、しっかりとしたうねりが入ってくるか
どうかは夜のうちには分からない。

少しばかり不安を抱えながら当日の朝を迎え、いつものように波チェックで汐小前のポイントの地下道をくぐる。

いざ海へ出てみると、そこには今年一とも言える波がビーチに押し寄せていた。

本戦開幕。

Photo by KENYU / KNOT

9月30日。(木)

セットは頭半以上、アべレージの波も申し分ない程のコンディションを台風が運んできてくれた。

Photo by KENYU / KNOT

これまでのうねりとは間違いなく質が違う。
すぐさま海人君からGOサインが出た。

選手に連絡が入りビーチに集められる。

海人君の一声とともに選手みんなが引き締まったような気がした。

KNOT online contest本選がスタートした。

Photo by KENYU / KNOT

各選手の素晴らしい演技は是非とも映像でご覧頂きたい。

是非皆さんにフォーカスしていただきたいことがある。
それは、既存の競技としての採点が採用されたわけではなく、30分の中で1本でも一番良い演技をした選手が勝ち上がるということ。

Photo by KENYU / KNOT
Photo by KENYU / KNOT

サーフィンの世界では、大きい大会で優勝した時より1本の波がその人をフューチャーさせる時がある。

むしろフリーサーファーはそのために何度もチャレンジしていく訳だが、そんな中で決勝に向けてボルテージを上げていった飯田航太が勝利を掴んだ。

Photo by KENYU / KNOT
Photo by KENYU / KNOT

航太は普段からコンペティション寄りではなく、どちらかと言えば良い波を求めて動くフリーサーファー気質の選手。

どうしても競技で結果を残した方が認知される日本のサーフシーンにおいて、

特殊ではあるが大会形式の本イベントで強豪ぞろいのコンペティターを抑えて航太が優勝したということは、フリーサーファーの存在意義が日本において、まだまだ大きくなる可能性があるのではないかと感じさせてくれた。

そして、そんな選手をこのような形でフックアップできたことこそが、KNOTを開催した大橋海人の最大の狙いだったと思わざるを得ない。

今後、海外トリップへと続いていくKNOTプロジェクトにおいて、ジャッジ+平原颯馬・飯田航太が日本のサーフシーンにどんな影響を与えるのか楽しみで仕方がない。

最後にこのプロジェクトの発起人大橋海人について話させてもらいたい。

担い手として

海人君と話していると、そもそもの「フリーサーファー」というワードの意味が世界中を旅して出会ってきた、それを生業としているサーファーを見てきている本人と、画面越しで観るだけの僕たちの間ではかなりのギャップがあると感じる時がある。

世間一般で認識されているフリーサーファーと言えば、未開の地へトリップをして良い波に乗ってそれを映像に納める、と言ったサーフィン本来の楽観的や芸術的に見える面が多いかと思う。

その姿を理想のサーファー像として世間に見せることが彼らが業界やブランドのアイコンとして生活できるベースになっている。

しかしコンペシーンならまだしも、そのフリーサーファーの最先端の裏側がどんな様子なのかは今まで日本人で誰も見えなかったのではないではないか。

そこに足を踏み込んだのが海人君だったと思う。

丁度、KNOT期間中に”stab high”という世界のトップフリーサーファーのみがインビテーションされるイベントと、世界一のフリーサーファーDane Reynolds率いるFORMERクルーとの撮影があった。

そんな彼らとのトリップの様子を、海人君は旅から帰ってくると色々と話してくれた。

まず、楽しい現場の裏腹、そこには相当のハードワークがあったということ。

1ヶ月間毎日頭以上の波で日の出から日が暮れるまでベストな映像を残し続けるということ。

普段トレーニングをしているコンペティターより、きつい場面が多々あるのだと思った。

それを見て体感してきている当の本人も海に入る時間は誰よりも長い。

また人間性についてもよく言っていて、海外で一緒にトリップしたサーファーたちはみんな人柄もよくサーフィン以外でも尊敬できる部分があって刺激になると話してくれる。

海人くんは、フリーサーファーが浸透していない日本において仕事としてのフリーサーフィンが海外ではどんなものかを伝える担い手の役割になるのだと思う。

そしてそれが、コンペ・フリーに関わらずこれからのサーフシーンを背負っていく若い世代をフックアップしていく“KNOT”に現れていると感じた。

Photo by KENYU / KNOT

「日本のレベルの底上げ」、海外の一流に触れることによってそれが日本の中で連鎖することを目的としたこのプロジェクトであるKNOT。これは単に日本の若い世代に向けられただけのものではないと思う。

と言うのも、それは試合が終わってからのセッションで現場にいた皆が感じていただろう。

発起人の大橋海人本人が一番に刺激を受け、誰よりもチャージしていたことを。

Photo by KENYU / KNOT

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