ロングボード競技の新潮流

プロロングボーダーのJulian Hopkinsです。 

以前書かせて頂きましたサーフィン競技に関するコラム

こちらの記事の終盤で、ロングボード競技が転換点に差し掛かっていることについてコメントしましたので、今回はその部分を少し掘り下げていきたいと思います。

|ロングボード競技に見られた変化 

グローバルなサーフィンの団体で、ショートボードのワールドチャンピオンシップツアーを運営しているWSLが開催するロングボード部門では2019年から、カリフォルニアのスタイルマスターでLong Board Magazineのエディターとしても活躍してきたDevon Howard氏をコンテストディレクターに迎え、1戦ないしは多くて2戦でワールドチャンピオンを決定する方式からヌーサ、スペイン、NYの試合結果により台湾での最終戦出場の権限が決められ、この最終戦で世界チャンピオンを決める方式にアップグレードされました。


ショートボードと比べるとかなり小規模だったロングボードのワールドツアーが、2019年は活気を取り戻したような年になりました。

そして、ジャッジングのクライテリアではstyle, flow and grace やfootworkなどトラディショナルで優雅なロングボードスタイルも評価の対象となり得るような項目が加わりました。

参考URL:https://www.oxbowshop.com/fr/histoire-marque-oxbow.html

90年代ロングボードワールドツアーのポスター、ライダーはジョエル・チューダー。

これ以前はどちらかというとレールサーフィンを主体にノーズライディングを高次元で融合し、難易度と過激さが評価される形式にあり、多くのサーファーが2+1のロングボード(フィンが3本ついており、機動性に優れたタイプのボード)で試合に出場していました。

重たいシングルフィンを優雅に乗りこなすロガーなどと言われるスタイルのサーファー達は、WSLにはほとんど出場することはなく、ジョエル・チューダー(今もなお現役のカリフォルニアのレジェンド・サーファー)が主催するダクトテープという、シングルフィンロングボードのコンテストやその他クラシックロングボード専門の大会に出場し、しのぎを削っていました。

参考URL:https://www.surfer.com/features/vans-duct-tape-invitational-heads-china/

クラシックスタイルのロガーイベント、ダクトテープ・インビテーショナルの面々

ハイパフォーマンスロングボードのWSLとクラシックスタイルのダクトテープの選手たちが同じヒートで競い合うことは非常に少なかったのですが、2019年のWSLジャッジング・クライテリア変更により、両スタイルのサーファーが同じヒートで競うようになりました。ダクトテープのファンにとってはお気に入りのロガーの選手がWSLでも見られるようになり、嬉しい出来事かもしれません。

参考URL:Sunny Garcia and Taylor Jensen join the world class line up for Surfing Champions Trophy 2014

ハイパフォーマンス・ロングボーディングの代名詞的な世界チャンピオン、テイラー・ジェンセン。

選手の方としては評価基準が変わったので、特に2+1の板でマニューバーにこだわって取り組んで来た人たちの中には、どのようなサーフィンをしたら良いのか悩んでいる人もいるかと思います。

ただ、私が思うのはコンテストが完全にクラッシクにシフトしたのかというと決してそうではなく、ジャッジング・クライテリアにはどの項目を重視するかは当日の波のコンディションに依ると書かれています。

“It’s important to note that the emphasis of certain elements is contingent upon the location and the conditions on the day, as well as changes of conditions during the day.”

参考URL:https://www.worldsurfleague.com/asset/28821/2019%2BWSL%2BRule%2BBook%2B-12092019.pdf

|ロングボード競技の今後について

日本のコンテストもこの影響を受けてか、近年シングルフィンのロングボードで試合に出る人が以前と比べると急増しているように思えます。

こうなってくるとどのようなサーフィンを評価するべきなのかジャッジも試行錯誤しているように思われます。 

海外での例ですが、例えばWSLの試合でジャッジング・クライテリアの変化を反映し、サイズが大きくてしっかりと波のフェイス(演技をする斜面が広い状態)のあるコンディションでも8割ノーズライディングで組み立てられたライディングが評価され、 ちょっとした物議を醸し出していたりと、このロングボードの新潮流もまだ経過段階にあるように思えます。

また、ハワイ等パワフルな波の多い地域のロングボーダーの間では近年のWSLはノーズライディングばかりで面白くないといったコメントも聞かれ、WSLも1試合はサンセットやラニアケアなどのサーフポイントでパワフルで厳しいターンを評価せざるを得ないコンディションで試合を開催し、その評価も加味した上で真のチャンピオンを決めるべきだという声も上がっていたりもしています。

湘南でサーフィンをしていると、よく「プロツアーはシングルフィンに変わっちゃったの?」とか、聞かれることがあります。

確かにStyle, Grace and FlowやFootwork等ショートボードには無い項目をジャッジング・クライテリアに追加したことによって、ショートボードの試合との違いがより明確になり、ロングボードらしい美しさが際立つ競技にしようというWSLの運営側の意図は感じ取れます。
新しい項目が加わったことによりノーズライディングまでのセットアップ、ウォーキング、ノーズライディング時の姿勢もより厳しく見られるようになり、ターン等のボードの取り回しにおいてもロングボードらしい美しさも評価されるようになってきていると思います。
WSLの試合の実況を聞いていても「今のは美しかった」、「最高にクールなノーズまでのアプローチだ」、「素晴らしい表現力だ」など、なかなか粋な解説が聞けて、見ている側も楽しい気持ちになります。

ただ、シングルフィンにシフトしたのかというと、やはりそこはコンディション次第であり、各サーファーのスタイル次第なので、波に合わせて自分を一番良く表現できる方法や道具で挑むしかないのかと思います。そういう意味では今までよりも自由度が増して、あらゆるタイプのロングボードで自分らしさを上手く表現することに徹して日々の練習に取り組むべきなのかな?と個人的には思っています。

今年はパンデミックによりほとんど試合が開催されませんでしたが、来年以降国内プロツアーも開催が可能になるのであれば、各選手がどのようなライディングスタイルでこの新潮流に対応していき、まだ経過段階にあるこの流れがどのように熟成されていくのかは、世界でも日本のロングボードコミュニティにおいても非常に見物だと思います。

↓↓ Julianさんの過去記事はこちらから ↓↓

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